【レビュー】『天才』石原慎太郎

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最近、「田中角栄」本ブームの流れを生み出したのは、この一冊が出版されてからではないでしょうか。まるで、田中角栄氏が独白している自伝のように、石原慎太郎氏が一人称で書くことでリアルに感じました。


天才』石原慎太郎

”まして大事なことの頼みごとに、立案者の政党の有力幹部に二百万円などというはした金を持参するのは世間では当たり前のことで、挨拶に菓子折を持参するようなものだ。”

実に田中角栄の考えて、口にしそうな言葉なのかもしれません。200万が菓子折り程度というのも、驚きを隠せません。結果として、政治資金規正法に繋がる金権政治の側面、その後の政党再編も含めた時代の流れの源流なのかもしれません。

では、なぜ、敵視していたはずの石原慎太郎氏が、今、「田中角栄」本を書くのか。不思議でならない。そもそも、どんな評価を下していたのか。今だから、見えることがあるのだろうか、と思うと、長い後書きに書かれていた言葉がポイントに違いないと感じました。

”端的にいって政治家個人としての独自の発想でまだ若い時代に四十近い議員立法を成し遂げ、それが未だに法律として適用しているという実績を持つ政治家は他に誰もいはしまい。感性の所産である芸術はしばしば天才を生み出すが、政治という感性の不毛な世界で彼のようなまさに未曾有の業績をものにした人物は少なくとも戦後には他に見られはしない。”

表向きのイメージ、作られたダークなキャラクター部分などを超越して、実績を的確に評価しています。

政治家としての役割を誰もよりも担っていた天才的な男だからこそ、もう一度、光を当てる必要があり、田中角栄氏の再評価を促す時代のトレンドに繋がっているのかもしれません。

普通の人には理解もできない怪物であったことは間違いありません。

現代の人物伝として、読んでみたい方にはオススメの一冊だと思います。